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不登校問題改善への提言 佐久市不登校等対策連絡協議会 | 佐久市ホームページ

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(1)

不登校問題改善への提言(中間報告)

不登校等対策連絡協議会

<はじめに>

佐久市でも不登校児童生徒の 増加が問題 となり、平 成14年度に 「不登校等対策連絡協 議会」を設置し協 議を進めてきた。その 間、国や長野県全体では 、取り組みの 成果がわず かであるが見え出 し、減 少 傾 向の兆しが 現れてきたが 、佐久市においては減少傾向が見ら れず、わずかではあるが増加 し続けているのが現状である。し か も、中でも「 中1ギャッ プ」といわれる現 象が特にはなはだしく 、中学校1年 生では小 学 校6年生の3 倍にも膨れ 上がり、その後中学校では学 年が進むに 連れて増加している。このような不登校生徒の増 加は、卒業後の引 きこもりや 、フリーター及びニート の増加といった社会問題 にもつなが ってきているとも考えられる。

この憂慮すべき 問題に対して 、佐久市不登校等対策連絡協議会で は、昨年度 から協議会 内に「学校部会」「家庭部会 」といった専門部会を設 置し、そ れ ぞ れ専門的な検 討を続け、 このたび両部会からの検 討 内 容の報告が 提出された。 特に、学校部会では「学 校での指導 のあり方を見直す 」ことに重 点をおいて 検討し、それらを基に協議会としての 提言をまと める運びとなった。

この中間提言は 、不登校の解 消のために 、学校・家庭部会の検討内容の報告 に立って、 具体的な方策を協議会として 取りまとめ 、問題解決へ の期待を込 めて策定したものである が、今後この中間提言をベースに、追加等をしながらよりよい提言にしていきたい。

佐久市の不登校の現状と課題

1 不登校児童生徒の現状

(1)児童・生徒1,000人当たり不登校(平成17年度学校基本調査による)

小学校 中学校

全 国 3.1人 27.4人

長野県 4.6人 30.7人

佐久市 5.6人 43.5人

(2)不登校児童生徒の推移

小・中学校ともに全国では平成13年度までは増加傾向にあり、平成14年度から減少 傾向に転じている。長野県においては、平成16 年度まで3年連続で減少傾向にあった ものが、平成 17 年度は、小学校597人、中学校2,020人となり、小中学校合計 で2,617人と前年より94人増加している。

(2)

置にあり大きな教育課題となっている。学年別では小1の段階で既に 24 人が不登校に なり、学年を追うごとに増え、小5で155人、小6で217人、中1で一気に535人に 急増し、小6から中1の段階で2.5倍増加している。(中1ギャップ)

全国的には全体的に減少傾向にある中で、長野県及び佐久市においては増加している。 長野県の状況

年 度 小学校 前年対比 中学校 前年対比 合 計 前年対比

17年度 597人 1.04 2,020人 1.04 2,617人 1.04

佐久市の状況(市町村合併前は各市町村の合計)

年 度 小学校 前年対比 中学校 前年対比 合 計 前年対比

15年度 35人 0.97 108人 1.04 143人 1.02

16年度 33人 0.94 120人 1.11 153人 1.07

17年度 35人 1.06 134人 1.12 169人 1.10

特に中学校において増加傾向にあり、学年が上がるにつれて多くなる傾向にある。

2 不登校になった直接のきっかけとなったこと(学校からの資料)

区 分 平成16年度 平成17年度

1 友人関係をめぐる問題 6 4

2 教師との関係をめぐる問題 1 2

3 学業の不振 0 2

4 クラブ活動、部活等への不適応 1 0

5 学校のきまり等をめぐる問題 0 1

6 入学、転編入学、進級時の不適応 0 1

7 家庭の生活環境の急激な変化 4 1

8 親子関係をめぐる問題 0 1

9 家庭内の不和 1 2

10 病気による欠席 3 3

11 その他本人に関わる問題 16 15

12 その他 0 2

13 不明 1 1

1 友人関係をめぐる問題 24 40

2 教師との関係をめぐる問題 4 3

3 学業の不振 11 18

4 クラブ活動、部活等への不適応 2 2

(3)

6 入学、転編入学、進級時の不適応 1 0

7 家庭の生活環境の急激な変化 4 2

8 親子関係をめぐる問題 3 10

9 家庭内の不和 5 3

10 病気による欠席 12 9

11 その他本人に関わる問題 47 41

12 その他 0 4

13 不明 7 2

合 計 153 169

・「直接のきっかけ」の具体例

①友人関係をめぐる問題(いじめ、けんか等)

②教師との関係をめぐる問題(教師の強い叱責、注意等) ③学業不振(成績の不振、授業がわからない、試験が嫌い等) ④家庭の生活環境の急激な変化(親の単身赴任等)

⑤親子関係をめぐる問題(親の叱責、親の言葉・態度への反発等) ⑥家庭内の不和(両親の不和、祖父母と父母の不和等)

⑦本人に関わる問題(極度の不安・緊張、無気力等)

・不登校状況が継続している理由

小中学校とも、 情緒の混乱 、複合、無気力が70% 近くを占め てる。その他中学生にな ると遊び・非行との関連が急増してる。

・不登校児童生徒数の推移(佐久市の統計から)

佐久市の小学校では、平成13年度をピークに減少傾向を示している。 中学校では、平成8・9年度から急増し、現在も増加傾向にある。

全国・長野県・佐久市でも、 中学に な る と急増する傾 向は同じであるが、佐 久 市の中学校 の不登校は増加傾向を示している。

3 集計から見られる佐久市としての課題 (1)不登校児童生徒の現状から

佐久市に お け る不登校児童生徒の推移 を全国・長野県の統計と 比較すると 、中学にな ると急増する傾 向は同じであるが、国・ 県では最近 は減少傾向を 示している 中、佐久市 ではその傾向が現れてきていない。また、中学校で急増するのは、どこに問題があるか、 小学校も含めてその問題の究明と対策も課題である。

(4)

学校からの報告では、小学校では「本人に関わる問題」が断然多いと報告されている。 本人に関わる問 題とは「極度 の不安・緊 張、無 気 力 等」である。 それがどのような中で 感じるのかその背景は何かを見定めること。

中学校でも「本人に関わる問題」と「友人をめぐる問題」(いじめ、けんか等)がそれ ぞれ3割近くを 占め、全体の 6割に当た る。このような問題の背 景と、そ れ を打開する ことが中学校において大きな課題である。また、中学生になると「学業不振」「親子関係 をめぐる問題」 も多くなってきている。 そのような 問題の背景も 探っていくことも課題 であろう。

(3)問題の背景を家庭も含めて広く捉えることから

上記の課題は、学校だけの課題とは言い切れない。「本人に関わる問題」でもその他の 問題でも、家庭 との関係も そ の背景と し て考えることも大事で あ る。どんな 事がどのよ うにつながっているか、その背景を幅広く捉え適切な対応をすることが課題である。

学校の指導 と家庭での対応の見直しの視点

不登校の問題は 家庭の問題であるといわれるが、こ の問題は児童生徒が集団 とのかかわ りやそこで学ぶことから逃避 するとも考 えられる。多 くの児 童 生 徒は決して学 ぶことを自 ら拒むものでもない。その意 味からも、 この不登校等 の問題は、 学校教育の問 題として捉 え、その改善を図っていくことが大切である。

ここでは、学校 の指導のあり 方や家庭で の取り組み を見直し、どのような視 点に立って 考えるかまずそのことを考えてみたい。

1 日々の学 校 運 営や授業の 中で、児童生徒が学ぶことに満足感 ・成就感・喜 びを感じ、 生きる力を育てるような学校教育が願う姿となっているか改めて見直す。

各校の掲げている「学校運営の方針」のもとに行われている「授業改善の取り組み」「生 徒指導の取り組み」等が、児童生徒に学ぶ喜び・共に生きる喜びにつながり、不登校生 をつくらないという視点から効果的に実践されているか検討する。

特に、学校での教育活動の大半を占めている「日々の授業のあり方」について、児童 生徒が自ら学ぶ意欲と、喜びにつながっているか、そのあり方を検討する。

2 職員が不登校等について共通理解を深め、積極的に対応しているか見直す機会を持つ。 不登校生が減少しないことは憂慮すべき問題であり、小・中学校を通した教育上の大き な課題であることの認識を持つ。

また、不登校生は、いつ出てもおかしくないという認識に立って、早期発見・早期対 応の大切さを共通理解すると共に、その発見の仕方や対応を検討する。

(5)

体制作りを検討する。

3 不登校の児童生徒の思いや親の苦しみや悲しみを理解し、PTA として、地域としてど のような支援が 出来るか、ま た、児 童 生 徒のよりよ い仲間づ く り を支援し、 不登校児童 生徒をなくしていくために、PTAや地域としての支援のあり方を学校・PTAが共に検討 する。

支援体制の 組織づくりと機能化のために

上記の視点に立って、どのように実践していったらよいか、そこで何が重要なのかを佐 久市内の実践を基にして、具体的な方策のあり方を考えてみたい。

1 中核となる組織と役割分担を明確にして取り組むことを (1)学校における組織づくり(例)

(2)学校長・教頭の役割 ・学校長のリーダーシップ

・校内の不登校等の状況を把握し、教職員を指導する。(指示・助言) ・職員の相談窓口となる。

・個々の支援計画の推進と検証を行なう。

・原級に復帰するまでの居場所の確保と指導方向を検討する。

学校長 関係機関

教育委員会

理事会

学級

担任 学年

主任 コーディネータ

不登校担当職員 教 頭

児童生徒 保護者

学年職員・養護

教諭等

職員会

校内不登校等対策委

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・他校と情報交換する。(理事会等) 2 状況に応じて関わり方を工夫することを

校内支援体制のもとで、相談活動、学力保障、人間関係の構築等個々に応じて居場所を 設定したり、関わる職員を配置したり支援方法を工夫する。

(1)早期発見・早期対応に心がける。

「中1不登校の未然防止に取り組むために」(国立教育政策所生徒指導研究センター) の中で「『小学校時代不登校の経験あり』は中1の4月当初、欠席理由が病気であっても、 休み始め当初から適当な対応を速やかに開始する必要がある」等、早期発見、早期対応 の仕方を具体的にあげている。「風邪という届けだったから]と放置してしまった例、対 応が分からずに放置したり、担任一人の判断で対応し長引かせてしまった例等を聞くこ とがある。

担任一人の判断でなく、複数の眼で判断できるような体制づくりを学校全体として心 がけること、時期を失せずに電話連絡したり、時には家庭訪問したりと行動を迅速にす ることが重要である。

学年会を中心に、早期発見・早期対応を心がけ、一応の成果を上げている中学校の例 がある。その学年の例を見ると、不登校ばかりでなく、学年で問題と感じたことについ ては、すぐに連絡しあって学年として対応するようにしているというのである。不登校 についても、学年の不登校担当職員が機能し、学級担任と対応に当たるようにしたり、 不登校担当職員が学級担任の強化にTTとして参加し、生徒一人ひとりに気を配っている という取り組みをしているという。このような早期発見・早期対応に努めていることで、 中1ギャップという現象が今のところ現れていないという報告もある。

一昨年度、思わぬ不登校生を出してしまった小学校で、学校長自らが何がそうさせて いたかを見返す中で、学級担任が抱え込んでいたり、一人でその対応に苦しんでいる実 態があることから、「どの子もみんなわが学校の子ども」という視点に立って対応するこ とを提案した。不登校生については常にチームとしての対応と、休みがちな児童につい ても学校長が把握し声かけをしていくことによって、学級担任はじめ職員の意識が変わ り不登校生を出さないようになっていったというのである。

上記の事例に見るように、早期発見・早期対応がいかに大事かを学ぶ事例である。

(2)日々の授業のあり方と学習の遅れへの対応を考えることを ① 子どもが学ぶ喜びを感じあえるような授業を心がけるようにする。

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と感じる授業であったら、学校に行くことへの魅力を持たせることにもなるであろうし、 少しくらいな抵 抗を乗り越えていく力ともなっていくように思う 。その結果 、不登校生 も少なくなったり、不登校の 児童生徒が 学校復帰へ の思いを高め ることにも つながるよ うに思う。

このような授業 を実現していくには、ま ず子ども理 解を深める 必要がある 。教師一人 の力だけでなく 、多くの目で 子どもを見 取り理解することを共有 するようなことを、学 校全体で考えて いかなければならないであろう。児童生徒が分か り、出来る ことを実感 し、学ぶ喜びを感じる授業の創造を学校全体で考えていくことも大事であろう。

また、今は学校教育を地域 に公開し、保護者や地域 の人たちに 広く学 習 参 加の機会や 体験学習などを 取り入れることの大事さ も叫ばれている。児 童 生 徒の学ぶ喜 びの拡大も 視野に入れ、広く授業のあり方を工夫していく必要もあろう。

② 自ら学ぶ意欲を喚起するような取り組みを考える。

児童生徒が学ぶ 意欲を高めるためには、 上記の よ う な授業を行 っていくことが重要で ある。その中で自分の成就感や満足感を感じ自ら学ぼうとしていくように思う。しかし、 学校教育をめぐっては、週 5 日制導入による授業時間の削減により、基礎基本の力が身 に付かないこと 、並びに活 字 離れの現状 と、取巻く 環境は決して 楽観できるものではな い。このような 状況の中で児童生徒の学 習したことをしっかり評 価し、認め 励ますこと の重要さはいわれているものの、学 習 成 果を急ぐあまりそのようなことが十分意識され ていない状態も感じられる。

小学校へ入学してきた児童 が、自ら学習 することに 喜びを感じ 自分から取 り組もうと している。そ れ が学年が進むにつれてだんだんと学 習することの 喜びを失ってきている ような姿も見られる。このような姿はいろいろな要 素が含まれているものの 、学ぶ意欲 を失う児童が出 てくることであり、そ れ が中学生になればなおさら顕著に な り不登校の 要因の一つにもなっていることから、この問題も真剣に考えていく必要がある。

しかし、以上のことは大事 であると思いながら、教 師の現実はいろいろな 仕事があり 忙しく、な か な か上記の よ う に取り組めないということを言われることがある。このこ とについては、 学校は上記のことを行うよう努力することが第 一 義と考え、 仕事を精選 する必要がある。

③ 別室や放課後などの個別指導を行う。

不登校生や不 登 校に陥る児童生徒を見る と、学 力 不 足によるものも見ら れ る。この場 合、学力不足をどのように補 っていくかは、大事な 取り組みの一 つである。 日々の授業 の中で目をかけてやることは 勿論、放 課 後や時には 別室での個人指導も導入 し、その子 の学力不足と、学力不足からくる劣等意識の払拭に努めるようにしたい。

(3)人間関係(友だち関係)をひろげることを

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関わりを維持拡大するようにしていく。

不登校の児童生徒の中には 、いじめを 受けたり、 仲の良かった 友だちから 裏切られた り、一番身近な 学級担任になじめなかったりというような人 間 関 係につまづきを感じて いる児童生徒が 少なくない。 そのような 場合は、人間不信に陥ったり、人と の関係を拒 むといった行動 が見られることもある。 このようなことから、時 には昼夜 逆 転した生活 になったり、家 族とも十分に 関わりを持 たず引きこもるという状 態になったりすること もある。そのような児童生徒 の問題を考 える時、そのきっかけは 何であったか、状態を いろいろと考え 難しく捉えるのでなく、 その子の立 ち止まっている要因を見 つけてやる ことである。そのことによって、対応の 仕方が示唆 されるし、機 を見ることにもつなが るように思う。

② 時期を失せず電話連絡や家庭訪問を行う。

不登校を出さない取り組 みで大事なことは、学級担任との人間関係を良好 にしていく ことである。担 任がその子の 様子に気を 配り、気になるときは気 軽に電 話 連 絡をしなが ら関係作りをしたり、家 庭 訪 問をしてその子の内面 を聞いてやるようなことも大事であ る。その場合も 、一人で判断 するのでなく、多くの 目で見て判断 していくようにするこ とが重要であろう。

③ 日々の授業の中で、共に学ぶ人間関係を構築する取り組みをしていくことを

ある中学校の 事例である。 不登校対策 の一環と し て、学年あげ て授業改革 に取り組ん だ。中学校では 、基礎基本の 定着を図るということもあって、教 師による一斉授業が主 流となっていた 傾向があった 。生徒はどうしても受 身となると同 時に、学習 が個別化し ていき友だちとのかかわりの 少ないものであった。 そのため、生 徒は共に学 ぶという意 識が少なかったことを反省し 、友だち同 士が聞き合 い、教え合うことが出来 るような学 習形態を考えたことにより、 学習を通し て人間関係 を深めるように4名での グループ学 習を積極的に取 り入れていったのである 。しかも、 そのグループ も男女が関 係なく関わ れるような並び 方を工夫して いたのである。このような授業形態 を取り入れることによ り、共に学び あ う喜びが生ま れ、一人ひとりの生徒 が意欲的に学習参加できるようにな ってきているという。学校生 活の中核をなす授業を 見直すことにより、新た な人間関係 づくりになった一例である。

(4)生徒自らが自分たちの学校をつくりだしていくような取り組みを

① 生徒会を中心に、自分たちの学校をつくっていくような活動を大事にする。

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考えを繋げながら検討され、決定していくものである。

このように、 教師と生徒 が願いを共 有し、より良 い学び舎をつくりだそうとする取り 組みにより、自分の学ぶ学校に愛着が生まれ、共に学ぶことに喜びが生まれてもくる。 このような生 徒 会を中心に 、自分たちでつくる学校運営を実現 していこうとしていく試 みは、不登校をださない取り組みにも繋がっていくものと考える。

② 児童生徒に仲間意識と、自分の学校に誇りを感じる気持ちを育てることを

生徒会を中心 に、生徒自 らが学校をつくりだしていくことは 、生徒に自分 の学校に誇 りを持たせることにも繋がっていく。自 分の属している学校や学 級・仲間に 誇りを持て るようにしていくことは、今の生徒にとってなにより大切なことである。

では、児 童 生 徒にどのように仲 間 意 識を育てていったらよいか、また、自 分の学校・ 学級に誇りを持てるようにしていくことは、どのようにしていったらよいだろうか。 ある学校の1 年生に学習遅進児が入 学してくることになった 。学習遅進児 や学習障害

を持った児童は 、とかく学級 や仲間から 疎外されている例は耳にするが、そ の学級の取 り組みを紹介したい。

この児童の家 庭では自律学級に在籍 することを了 解していた が、出来ることなら入学 当初はこの学級 で生活させたいという願 いを持っていた。母親の 願いを聞い た学級担任 は、できる限り原学級での生活を考えて出発した。学校生活が始まるとその児童をめぐ って数々の問題 が持ち上が り、時にはその子が疎外 されるような場面が生まれた。学級 担任は、学級の 子どもたちがその児童を 自分の仲間 として受け入 れてくれるようにとそ の機会を待った。

子どもたちは 学校生活に 馴れてくると仲間も広が り、次第にその子の存在 を忘れてし まったようなことが起きた。 学級担任は 、そのことを学級の問題 として取り 上げ、子ど もたちがどのようにしていったらよいか 考えさせたのである。このような活 動を繰り返 す中で、障害を持った子も大事なクラスの一員という意識が広がっていったという。 障害を持った 児童を受け 入れていくことは、まず 学級担任の 姿勢にかかっていると言

えよう。まず、 学級担任が そ の子も大事 な仲間と い う意識を持つことから始 まる。どの 子も、自分た ち の大事な仲間 という気持 ちを持たせることは、そ の学級で一 人ひとりが 大事にされていく学級に繋がるであろうし、そんな 仲間と生活できることに 誇りが持て るようにもなる 。子どもに仲間意識を育 てていくことが、不 登 校 児を出さ な い大きな力 ともなるように思う。

自分の学級・ 学校に誇り を持たせることは、児童生徒に居 場 所を持たせることにもな ったり、生きがいや存在感も 感じさせることにもなる。そのような学級・学 校にしてい くためには、教 師が児童生徒 や地域の声 に耳を傾け 、地域や学校 ・生徒の本 当のよさを 感じ取り、それを教材化して深めていくことであろう。

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直らせていく力となっていくようにも思う。 (5)家庭への関わり方を工夫することを

複雑な家庭や、多様な考えの保護者が増えている中で、子どもの生き方が影響を受ける 例も多く、学校と家庭が理解しあい信頼関係を高めるためには格別な努力が必要となる。 ① まったく会えない状況の 中でも、誠 意の伝わる対 応によって 心開いた事例 もある。子

どもの育ちを共に支援するという雰囲気を醸成し、学校への信頼を深める。

ある中学校の実践である。親は「子どもが不登校になったのは、担任や学校の責任だ」 と、担任や学校 の働きかけをまったく受 け入れようとしなかった 。その こ と を聞いた学 校長は、その家 庭や母親に問 題があるということを 感じつつも、 その担任に 週に1∼2 回は訪問することをお願いしたというのである。

学級担任が訪問 しても、勿論玄関払いであった。そんな状態が 続くことで 、担任も家 庭訪問することの意味が感じられず、再 び学校長の 裁断を仰いだ 。学校長は 、その担任 の訴えに対し「 何か話そうとしなくてもいい。顔だ け出すことをし続けるように」と家 庭訪問の継続を頼んだのである。

成果は決してすぐには現れなかった。担 任も、学 校 長の願いに 良く応え、 家庭訪問を し続けた。数ヵ 月後、その成 果が見られたという。 まず変化したのは、生徒 である。自 律学級に顔を出 すようになったのである 。自律学級 での生活を休 むこともなく続け、登 校してきた。そんな状態が続いたある日、母親が学校長を訪ね「校長先生すみませんでし た。私は娘に、どうして私の先生を追い返したのかと叱られてしまいました」と話してく れたという。担 任の先生の根気強い取り 組みが子どもを動かし、 子どもによって母親が 動かされ信頼を結んでいった事例である。

② 誤解や不信が高じる場合に、担任だけでなく状況に応じて複数の職員で関わることも 担任の家庭訪問 のときの一 言や児 童 生 徒への対し方 で家庭がかたくなになっている例が ある。そんなとき、複数での 訪問が功を 奏することもある。担任 に加えて、 学年主任や 不登校担当職員 や生徒指導主事、時には 養護教諭や 自律学級担任 である場合 がある。誰 と訪問するのが 効果的か、そ の児童生徒 、課程の状 況によって異 なることである。訪問 前によく検討すると共に、訪問後の様子 を学校長や 教頭に伝えながら、家庭訪問のあり 方を検討していくことも大事であろう。

3 不登校生を抱える保護者の悩みを共有できる取り組みを

(1)子どもが立ち止まったときは、保護者はそのわけを良く聞き取る努力を

幼稚園・保育園児や小 学 校の低 中 学 年の子どもが 「学校へ行 きたくない」 と言い出し たり、行くのを 嫌がって泣いたりぐずったりすることに出逢うことがある。 そのような 子どもの状態をどのように捉 え、どのようにしていったらよいか 、その対応 に迷い苦慮 するところである。

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と捉えることもできる。自分 の思い通りにならない 、先生や友だちが怖いと 思ったりす るのは、感じる 心が育とうとしているからだともいえる。ただ困 ったと思うのでなく、 育とうとするときを大事にし 、何が子どもをそう感 じさせているか、何が見 えてきたか を子どもの話しを良く聞きながら理解しようとすることが重要である。

子どもの立ち 止まりが、 その子自身 の生活に起因 していたりする場合は、 そのことを 大事に見取りながら対応することであろうし、集団 や学校生活に 起因する場 合は、担任 に相談しその対 応を共に考えあっていくことである 。保護者も担 任も、子どもの立ち止 まりはその子が 育つ大事なときであることを自覚し 、両者がその 考えや子どもの状態を 共有しあって対 応することが 、子どもの 心を強くし 、子ども自らいろいろなことに向か っていく力を付けていくことにもなり、不登校を防ぐ上で大事なことである。

(2)学級PTAで不登校生を抱える保護者の悩みを話題に出来るようにする。

不登校生を抱え悩んでいる母親に、学級担任や学級会長から「学級 PTA で不登校で悩 んでいるお母さんの気持ちを 、皆さんに 聞いてもらうような機会 を持ち た い と思うがど うでしょうか」と提案があった。その母親は、今の心境を話して本当にわかってもらえる か不安もあったが、日頃担任 の先生には 子どものことを真剣に考 え関わってもらってい ることもあって、先生を信頼して了解したという。

学級PTAで、その母親は子どもの状況や自分の心境を素直に打ち明けた。それに続い て、多くの母親 から悩みを真 剣に受け止 め、何とか 力になろうとする発言が 続いたとい う。その学級PTAでの話し合いの後、話をしたことでとても気が楽になったという経験 を話してくれた 。自分の悩み や心境を子 を持つ親として真剣に聞 いてもらっただけで、 前向きに生きようとする気持ちが湧いたというのである。

このように一番身近な学級PTAで、不登校や不登校で悩む母親や家族を話し合えるよ うな運営をしていくことが大 事である。 そのために は、教師をはじめ学 級 全 体が、その ような話し合い が出来るよう な関係作り を、普段か ら教師も保 護 者も共に心 がけていく ことが大切である。

(3)PTAでの取り組みが出来るような体制作りを心がけていくようにする。

前項でも記述したように、学級PTAで話題に出来るようにするためには、学校全体の PTAでの取り組みや教師集団の取り組み姿勢が重要であることは言うまでもない。話題

にすることによって、かえって嫌な思いを助長させる結果を生まないよう、取り上げ方 や取り上げるタイミングを検討し、配慮すべきことを十分に了解した上で行うことを忘 れてはならない。そのためには、全体のPTAで、不登校問題等について理解を深めるよ うな取り組みを工夫していくことが大事である。

4 関係機関との連携を充実させていくことを

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中学校での不登校状態の生徒の多くは、小学校時代に何らかの兆候が見られることは 多くの調査の中で指摘されていることである。特に、国立教育政策研究所で平成13・ 15年度に行った中1不登校生徒調査に基づいた「中1不登校の未然防止に取り組むた めに」の中でも詳しくそのことを述べている。その中でも指摘されていることではあるが、 従来行われている「幼・保・小連絡会」「小・中連絡会」での内容や取り組み方を検討し、 不登校や他の問題に対処できるよう綿密な情報交換のあり方を考え工夫していく必要が ある。

児童生徒のそれぞれの前の様子を知らずに、適正な指導のあり方を考えることはでき ない。小学校では、幼稚園や保育園での子どもの育ちの様子を理解し、育ちを予見しつ つ指導を考えることであり、中学校では入学当初から小学校からの情報に基づいてより よい対応に努めることが重要である。

(2)スクールカウンセラーやスクールメンタルアドバイザー等の連携を深めていく。

不登校についての相談の場や機会がますます必要になってきている。現在佐久市では、 スクールカウンセラーや中学校区ごとにスクールメンタルアドバイザーを配置したり、 児童課や児童館に家庭相談員を配置し、相談体制を充実してきている。しかし、いくら 相談体制の充実を図ろうとも、その体制が十分に機能しないことには成果を上げること が出来ない。児童生徒・保護者・教職員がそれらの相談体制を周知することと、その活 用を充実させていくことが重要である。また、それらの相談機関の効果的な連携のあり 方も工夫していく必要があろう。

(3) 中間教室の活用やフリースクール等の連携を考える。

現在佐久市では、中間教室として野沢会館にチャレンジルームを開設している。その 活用や連携のあり方も学校によって違いがあるように思われる。積極的に活用を働きか けたり、利用している児童生徒の様子を連絡しあっている学校もあるし、連絡があまり 行われていないような場合も見られるという。学校として忘れてはならないことは、中 間教室を利用していても、児童生徒は当該学校や学級の生徒であり、その気持ちを児童 生徒が感じ続けるような配慮を忘れてはならないことである。児童生徒に、居場所の確 保は勿論、自分の存在感を感じられるよう配慮していくことが、不登校生を出さないば かりでなく、復帰を可能にしていく大事なことであることも忘れてはならない。

(4)医療機関や福祉機関との連携も十分にとるように

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までもない。

(5)保護者会の開催と内容を検討することを

不登校生を抱える家庭は、どうしても孤立しがちである。しかも不登校が長くなると、 その子の存在が忘れ去られたようになるという悩みも聞かれる。学校と家庭との意思疎 通という意味からも、また孤立してしまわないためにも各校での保護者会を定例化して いくことも必要である。また、その会の開き方や内容についても、不登校生を抱え る家庭の立場に立って行うことも忘れてはならないことである。

不登校支援 に関わる職員の配置について

当連絡協議会や 学校部会においても、学校現場の取 り組みの困 難 点ということで、いく つかの要望が上げられてきている。そ れ ら不登校対策支援という 観点から提出 されている ことを考えてみたい。

1 個別に対応できる職員の必要性について

ある中学校で、不登校対応職員を配置してもらったことから、その学年の不登校やそ の他の問題について対応でき、現在のところ一定の効果が見られているという報告があ った。学校で多くの不登校生を抱えたり,学級でも何人か抱えてしまった場合など、早期 発見・早期対応の重要性は認識していても、どうしてもそのことへの対応が遅れてしま うことも見られる。また、児童生徒の要望を取り上げ、個別に対応することを重視した 結果、学校でも居場所作りが何箇所にもわたり、職員の手が回らなくなってしまったと いうことも報告された。

現在、不登校生の状態や学校での取り組みの現状、その他の問題との関係等、その学 校だけでの検証は勿論、教育委員会なり校長会の組織の中で検討し、対応職員の増員を 含めて対応していく必要があろう。そのためにも、理事会等にそのような組織を早急に 立ち上げていくことも必要であろう。

2 不登校の問題 は、その背 景となっていることについて、学校 と児童生徒・ 家庭との捉 え方が一致しているものばかりでなく、 違っている 場合が多く見 受けられる 。このこと は、学校からの 相談を主としている場合 と、家庭の 相談を主にしている場合 とでは、捉 え方や対応にずれを生じてしまうこともしばしば起 きてしまうことである。 これらのこ とから、相談機関同士の内容の共有化を工夫していくことも、不登校生徒等に対応してい く上で重要なことであろう。

参照

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